2021年1月18日月曜日

国道 20 号諏訪バイパスについて

 昨年9月 14 日、国土交通省が、事業化を目指す国 道 20 号諏訪バイパス未着手区間(諏訪市四賀―下 諏訪町東町、約 10.3km)のルート・構造原案を公表 した。1972 年決定の都市計画道路を変更する手続き が始まり、今年の早い段階で都市計画案と、進めて きた環境影響評価の水質や動植物など 16 項目の調 査結果や予測・評価をまとめた準備書が示される見 通しだ。バイパスは現在の国道 20 号の山側を通り、 約8割がトンネル構造で、片側2車線、合計4車線 の計画だ。(次ページ地図参照)

その都市計画道路変更の説明会が、下諏訪地域に ついては、昨年 12 月 日に開かれ、私も聞きに行 った。下諏訪町の武居公民館において、武居地区に 予定されている国道 20 号線諏訪バイパスに係るイ ンターチェンジ(IC)案が示された(下諏訪町決定 とある)。渡された資料には、下諏訪都市計画道路の 変更3・6・18 号 秋宮武居線 向陽高校に至ると ある。

行政のバイパス促進の根拠として、国道 20 号線 の現状を次のように 点挙げている。

1. 豪雨による道路冠水 

2. 慢性的な交通混雑 

3. 交通事故の発生

その後の地元意見集約では、推進は無く、対案意 見が多かった。このバイパス開通・IC によって、武 居の北・南が分断されてしまい、コミュニティーが 分断され、生活環境を壊してまで必要な IC とは思 えないなど、反対意見が大勢を占めた。どうしても 通したかったら、武居を分断しないように、向陽高 校の上を通すことを検討すべきだという意見で終了 した。

促進側の理由として、1.の豪雨による道路冠水 の最たるものとして挙げているのが、平成 18 年 7月 19 日未明から、梅雨前線による豪雨で承知川が 氾濫し、土石流が発生し、鉄道・国道・区消防団 屯所の暗渠部に土石が詰まり、撤去作業に 30 時間 を要したこと、鉄道や国道が止まり大渋滞したこと だ。

その要因として考えられるのが、承知川上流に昭 和 58 年 月重力式コンクリートダム(高さ9m、 長さ 77.4m、貯砂量 6,710 m³)が造られた。が、そ の後、湛水池は満砂の状態であり、平成 18 年豪雨災 害の一因ともみられる。行政は災害後、その上流に スリットダムを建設した。しかし、その下の重力式 コンクリートダムもスリット化して堆砂を下流に流 すとともに、河床安定のために不断に浚渫すること が必要であると私は思っている。

諏訪地域についても説明会が実施された。そのあ と、昨年 12 月 20 日諏訪合同庁舎において、変更原 案に係る公聴会が開かれ、諏訪市・下諏訪町の住民 24 人が意見陳述した。公聴会での発言は賛否両方あ った。

賛成意見としては、20 号線の交通渋滞解消、トラ ック輸送用のバイパス道路の必要、観光客増加のた め、などの意見が出た。

反対意見としては、中央構造線と糸魚川-静岡構造 線の交わっている場所であること、活断層の断層破 砕帯に沿った工事であること、地震の恐れ、地下水・ 温泉・河川への影響、酒造業では地下水の量と水質 の変化の恐れ、コンクリート多用による温室効果ガ スの増加、人口減少社会での道路増設の必要性はな い、などの意見が出た。

私も、諏訪地域経済に重い位置を占める酒造業・ 温泉観光業への影響の懸念、景観および地下水・水 への影響、地域の分断化の懸念、また、人口減少社 会で交通量・トラック輸送量の減少が予想される中 で、今から 49 年前に立てられた計画は、その後の社 会変化に応じて柔軟に見直されるべきだと思う。

県営下諏訪ダム・蓼科ダム計画も柔軟に見直され、 中止となった。その決断は今判断すると正解であっ たと思う。このあとは、配られた資料によると、県主体でアセスメントと都市計画の変更、市町村意見聴取、長野県都市計画審議会などの手続きがあり、令和4年2月上旬に国土交通大臣による変更告示が予定されている。

諏訪地域にとって大きな問題であり、影響の程度、 必要性の有無も含めて、今後注目していかなければ ならない大きな課題である。

編集部追記
 諏訪側のインターチェンジは二葉高校の上、霧ヶ峰と展望台への分かれ道にできる計画。市街地への
アクセス道路は現状の道で狭い。下諏訪側のアクセスも同じ。交通状態が悪化する。両方とも高校生の通学路。

一方、2016 年 月、環境省は「諏訪バイパス」の 未着工区間について配慮しなければならない事項に ついてまとめた「計画段階環境配慮書」に対する環境相の意見を国土交通省に提出している。その中で、 水資源への影響を極力回避・低減するよう求めてい る。(20169,13 信濃毎日新聞より)

 今後、アセスの手続きでどういう対応がなされるのか注目したい。