2010年4月6日火曜日

広域ゴミ処理から廃棄物資源管理へ   佐原香

 去る3月13日岡谷市の下浜区民センターで「広域ゴミ処理と環境汚染~岡谷市は広域ゴミ処理を引き受けるのか~」と題する講演会を行った。講師は民間シンクタンクの環境総合研究所副所長の池田こみち先生。
主催は「ごみ処理を考える会」。3年前から「ごみ溶融炉を考える会」として活動してきたが、各地の溶融炉のトラブル(高額な建設費・維持管理費、事故等)と、諏訪南での導入計画中止を見れば、湖周(岡谷市・諏訪市・下諏訪町)でも溶融炉導入は多分無いだろうとの見込みから、この講演会を期に会の名称を変更した。
 先生は岡谷・下諏訪へ来てくださるのはこれで3回目で、この地域の問題に詳しい。先生は「地域によってゴミの質や量が違うので、広域でゴミ処理するのは問題だ。どこかに不公平が出るはずで、統一的にやるのは難しい」と。実際、諏訪市は人口51,000人だが、焼却ゴミ量は年間18,000t(平成20年度)。そのうち事業系ゴミが4割を占めている。ホテル・旅館・事業所などが多いせいだ。一方、岡谷市は人口53,000人でゴミ量は14,000t、そのうち事業系ゴミは2割だ。
 岡谷市の焼却ゴミの中身を調べると、紙布類が40%を占め、廃プラ類が20%、生ゴミなど有機物が32%で、全体の9割は分別資源化が可能だ。ところが、平成27年度までの岡谷市の減量目標は32%、諏訪市・下諏訪町は30%で、目標がお粗末だと。
 横浜市で中田市長の時、ゴミ減量30%の目標を目標年度より早く達成して、次に35%、今は41%を目標に推進している。その結果、焼却炉7基のうち2基を廃止できたとのこと。
 ゴミを燃やして発生する有害物質の除去に施設の半分と、多量の薬剤が使われるが、それでも煙突と灰に排出され、埋立処分場は管理型であっても汚染物質を完全に封じ込めるのは不可能だと。焼却し続ければゴミ量の10%の焼却灰はついて回る。この負のサイクルから抜け出すには、ゴミを燃えるか(燃やせるか)否かでなく、資源化できるか否かで分けるべきだ。廃棄物の資源管理政策を考えることにお金と時間を使うべきだ。先生はよその豊富な実例と、岡谷市の分析資料をプロジェクターで映しながら説明してくださった。最後の質疑応答でも時間が足りないくらい活発な意見が出された。

       広域のメリットは岡谷のデメリット
 岡谷市の3月議会で青木福祉環境部長は、広域処理のメリットを3つ上げた。しかし、その中身を検討すると、岡谷にとってメリットにならないと私には思われる。すなわち、
1.(部長)煙突を少なくすることでダイオキシン総量を減らすことができる。
  (反論)今まで3箇所に分散していたものを岡谷1箇所に集中させるので、岡谷にとっては大変なデメリットだ。またダイオキシン総量の減少は以下の2点による成果であって、広域化によるメリットではない。
 イ.30%のゴミ減量によってもたらされる成果。
 ロ.いま毎日、点火と消火を繰り返しているのを、24時間連続運転に変えればダイオキシンが生成されやすい低温域(200~300度)にならないことによる成果。これは今の炉でも運転方法を変えればできることで、広域のメリットとは違う。
 ハ.有害物質はダイオキシンばかりでなく、多種多様の化学物質や重金属が煙突や灰に排出される。今の岡谷の日量80t炉が広域なら120t炉へと1.5倍になり、焼却ゴミ量は岡谷の年間14,000tが広域なら30,000tへと2倍以上に増加する予想だ。岡谷市民はそれを浴びることを容認できるのか、市は市民にそれを甘受せよというのか。
2.(部長)交付金が受けられる。
  (反論)国の交付金支給条件がどんどん下げられて来て、大きい炉でないとダメという処理能力の条件も撤廃された。今は人口5万人以上なら単独自治体でも交付金が出るので、岡谷市も諏訪市もそれぞれ交付金をもらって別々に建てられる。よって、これも広域のメリットではなくなった。
3.(部長)運営の効率化ができる。
  (反論)1箇所でやれば運営はある面で効率的かもしれない。しかし、別のデメリットも考える必要がある。たとえば、
 イ.交通量と排ガスの増加。いま岡谷では業務委託で6台のパッカー車が1日に3~4回焼却場との間を往復している。延べ1日に18~24台である。これに諏訪市と下諏訪町からの車両が加わると交通量は3倍くらいになるし、排ガスも増加して、岡谷にとってデメリット。
 ロ.岡谷1箇所にすると、諏訪市・下諏訪町の車両は今より長距離運転となり燃料消費が増えCO2も増え環境にデメリット。国もその点からも広域のデメリットを認めて交付金の条件を緩和してきているとも言える。
 ハ.住民のゴミ減量意識の温度差。よそで処理してくれるとなると、やはり減量に安易になりがちで、温度差を感じる。
 岡谷市では今年4月から容器包装の廃プラスチックを資源として分別回収し始める。灰や煙突からの有害物質は今より減少すると予想され良いことだ。紙や生ゴミの分別資源化をさらに徹底すれば、焼却ゴミを激減させられるはずだ。
 日本ではゴミの焼却が常識のようになっているが、世界の潮流は違う。目標と政策をもって頑張ればかなりのことが可能であることを各地の実例が示している。大規模施設建設の借金サイクルに陥るか否か、今後20年以上も有害物質排出の固定施設を我慢するのか、最終処分場新設の必要に迫られるのか、あるいは焼却灰をよその埋立地に高額で委託するのか、などの分かれ目に立っている。いま脱焼却・脱埋立を目指して方向転換するべき時だと思う。

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