人工の川は直線化しているケースが多いのに、自然の川(例えばアマゾン)は蛇行している。日本にも釧路川のように蛇行している河川があるにはあるが、極めて稀である(多分唯一)。(以前信州大学の先生の講演を聴いたいたら、釧路川以外にも筑後川は蛇行しているが、蛇行したままコンクリートで固めてしまった、と言っておられた)。以前ヨーロッパに行ったとき、飛行機の窓からみたシベリアの川は無数に蛇行していた。「山の川は曲がっていない」とわたしの友人が言ったが、仔細に観察すると、山間地の河川も無数に曲がっており、凹凸が激しいことが分かる。「自然の川は蛇行している」という命題は、いわば定理みたいな普遍性を持っていることは確かである。
ではなぜ、自然の河川は蛇行するのか。河川の水衝部(水と土壌との接触部分)には固いところと柔らかいところがあり、柔らかい部分が削られるから、その反動で屈曲する、と説明してくれた人がいた。これは物理学の考え方で、流体力学とか、水文学とかそういった「科学的」な思考からはそう結論づけられるのかもしれない。でもわたしにはそうは思えない。同じ固さの(例えば一枚の大きな板)の上方から平均して水を流すと、しばらく下ったところで、蛇行を始める、という実験をビデオで見たことがあった。
わたしは生態系を生き物と見る。生態系はある意志(目的)を持って河川を蛇行させているのではないかと考える。それは河川を蛇行させれば、生態系にとって、或いはそこに生きている人類を含む様々な生き物にとって、よいこと(生態系の目的にかなったこと)があるからではないか。
では、河川を蛇行させることによって約束される、生態系の目的に沿うよいこととは、なにか。
①河川は蛇行によって、水路が長くなり、下流の水位が低下する。
②蛇行によって勾配が緩和し、①の効果が更に促進される。
③流下速度が低下し、さらに水位の低下を招く。
④蛇行によって河川内に、淵・瀬・州などが形成され、生物多様化を実現する。
⑤蛇行によって、地下水涵養が促進され、植物の働きと共に、河川水の蒸発が促進される(これをせせらぎ効果と呼ぶ)。
以上のことから、私は次のように結論する。
河川が蛇行するのは、生態系が下流の洪水を防ぎ、生物が生活しやすい環境をつくるためだった、と。
このことを忘れた人類という動物が、生態系の意思に反して、河川をコンクリート化し、直線化した。これによって、生態系としての河川は死んで単なる排水路と化し、洪水が頻発するようになった。なんとおろかな発想でなないか。
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