2010年7月29日木曜日

長野県知事選の焦点 市民の代表か官僚の天下りか

長野県知事選挙が、7月22日に告示されます。現在立候補を表明しているのは前県立信濃美術館館長、岩崎ちひろさんの息子で「ちひろ美術館館長」の松本猛さんと元自治省官僚の阿部守一さん(肩書きに前長野県副知事を名乗っていますが、これは自治省の押し付け、田中知事の指名によるものではありません)の二人です。政策の個々ではわかりずらいとしても、明快な争点が二つあります。

■ その一つは「第二の夕張が目前の、巨額の借金をどうするのか」です。吉村県政で一兆六千億円にまで膨らました借金は田中県政で着実に減らす方向にむかい始めたのもつかの間、村井県政は何の危機感もなく借金を増やし、再び同じ額に戻してしまいました。それも国の言いなりになって福祉、医療、教育、生活関連サービスを切り捨て、その見返りに起債を認めてもらって増やした借金です。

■ 元はといえば「中央官僚の天下り県政」です。古くは西沢県政、県企業局を先頭に巨大リゾート建設を県を挙げて推進しました。多くの自然が失われ、過当競争が生まれ現在では観光低迷の主要因にもなっています。借金の元はこの時代に作られました。そして吉村県政、冬季オリンピックの強行などで長野県を一気に過去最高の借金地獄に落としこみました。村井県政は前述したとおりです。これらの知事は共通して中央官僚出身です。天下りの官僚による政治と対照的だったのが、県民、市民の自由な意思で選んだ前田中県政です。税金の使い方を革命的に変え福祉、教育などの予算を増やしながら巨額な借金を着実に減らしました。
■ どんなにうまいことを並べても「もう天下り官僚の知事だけは真っ平ごめん」それが長野県民の本音です。再び県民市民の代表、松本猛さんで、県民のための県政を取り戻したいものです。まさに「古い上着よさようなら」と、この8月はさわやかな信州の夏にしたいものです。

■知事選裏話
阿部守一氏はその担ぎ出しに自民党系団体が積極的に動き、出馬表明と同時に最大労組「連合長野」が推薦を決めました。ところがその連合長野傘下の主要労組「県職員組合」は、推薦せず自主投票を決めてしまいました。表向きの理由は田中県政が職員給与引き下げを行い、そのときの副知事だったから・・・とか。しかしこれには矛盾があります。何故なら阿部氏は副知事の立場にありながら、その任期中ことごとく上司である知事の方針に反発し、裏切り的な行為を繰り返していた、といわれているからです。では本当の理由は何なのか。

■ 当時の県の幹部職員諸氏の話しでは、田中県政当時「県の行政がストップしてしまう」と職員が悲鳴を上げる一時期があったそうです。その原因は阿部副知事の机の上にうずたかく積み上げられた未決済書類の山。決断力の無さが招いた県政の停滞です。このことを身をもって知っている職員諸氏、この当たりに自主投票とした意味が隠されているように思います。もともと阿部氏は田中知事の推挙によって副知事になったのではないようです。その前の杉原特別秘書が脱ダム宣言に反して、裏でダム推進の裏取引をしていたのが発覚して更迭され、副知事の席が穴になっていたところへ自治省から送り込まれたのが阿部氏でした。まさに天下り官僚、というよりその裏には自治省も役に立たない官僚を体よく処分したとの噂しきり。その後副知事のイスも失った阿部氏はどういう世渡り術(自治省になきついたとの話しも)か横浜市の副市長に納まります。ここでも五人の副市長のうち三人が阿部氏が副市長だということを長い間知らなかったという話し。行政マンとしていかがなものかと首を傾げたくなる話しが続々とでてきます。


■ 一方の松本猛さん、先日6月27日茅野市にあるカラマツストーブの事務所で政策懇談をした席上、「あなたのような、政治の醜い世界とは全く無縁な、清廉な文化人がどうして県政に踏み込もうとしたんですか」という質問が出ました。このほかにも「人間としては申し分ない人だが、あんな魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく世界で、駆け引きなどが出来るんだろうか」と心配する声も聞かれます。その答えは二つあると思います。
■ 経営手腕
長野県立信濃美術館(東山魁夷館併設)は、年間10万人くらいの来館者で推移してきましたが、あるとき館長が汚職事件を起こし、ついで事務局長がセクハラ事件を起こして、一気に来館者が三万人台に落ち込んでしまった時期がありました。この事態に田中知事が美術館の経営改善を託して館長に就任したのが松本猛さんです。新しい発想の元信濃美術館は立派に立ち直り、今では年間入館者数三十万人を超える美術館になっています。全国でも軒並み赤字の公立美術館の中で異彩を放っている信濃美術館、この経営建て直しに尽力したのが松本さん。その中で松本さん自身、県の行政の仕組みが如何に硬直した縦割り型になっているか、ここを直していかなければ県民の要望を満たす効率よい県政は実現できないと痛感したと述べています。
■ 汚れた裏取引の政治の世界
県民の誰もが県政は裏の世界の取引で動いているんじゃないかと思っています。政治家というイメージが薄汚れた金と権力を連想させるのもそのためです。たしかにそんな世界を相手に自然と文化、教育を花開かせるのは容易なことではありません。しかし県政が県民に開かれた、明るく清新なものでありたいという願いは、おそらく大多数の県民の願いであることも事実です。取引や駆け引きは密室で行われるから力を持つのであって、これが全て県民の前に明らかになる公開の原則が守られれば、裏の駆け引きなど何の力もなくしてしまいます。わたし達は改めて提案します。かつて脱ダム宣言によって県下のダム計画が全て中止となった後、以後の各河川の整備を検討するため、各河川ごとに県が設置した(注)「流域協議会」、諏訪地方では上川と砥川に設置されていますが、この協議会方式を各分野、地域にきめ細かく設置して政策や方向を提言していけば、一部の権力者などのエゴも抑えられ、幅広い県民市民の声が直接県政に反映されるのではないかと考えます。いまだに旧態の県議会の構成からみても、知事一人の力には限界がありますが、この協議会による提言を重視することを議会に認めさせることができれば、以外に明るい展望が開けるのではないかと思うのです。

(注)流域協議会
上川流域協議会を例にとって説明します。会員は、公募の市民(現在約40人)、諏訪市長、茅野市長、建設事務所長、地方事務所長で構成されています。事務局は治水関連組織なので建設事務所管理計画化が担当します。構成会員は全て平等の権利を持っていて、座長は会員の互選によって決められ、上川の場合は座長に環境会議・諏訪会長の塩原さん、座長代理に脱ダムネット茅野の幹事である木川さんが就任しています。蓼科ダム計画が中止となった以後、上川流域協議会は一年余の論議を経て新河川法の精神を先取りした画期的な上川の河川整備計画を策定して県に提言しました。また徹底した現地調査によって維持管理必要箇所を洗い出し、田中県政当時補正予算として組まれた緊急河川維持管理事業では、総予算の半分以上を占める事業費を得て、上川の各所で数十年来の悲願となってきた改修箇所のほぼ全てを完工することが出来ています。

この協議会は県下9ダム計画の是非を論議するために、条例に基づいて各河川に設置された部会、その一つの上川部会が全員一致でダム計画の中止を決定し、それを知事答申したなかで、「今後の河川行政は、行政、地元首長、流域市民、専門家が叡知を結集して行えるよう協議会を設置すべき」と盛り込まれた条項に基づいて、設置されたものです。

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