私たちの中学生だった頃、世界史の最初のページは「エジプト文明」だった、と記憶しています。「今から五千年前、ナイルのほとりに突如として文明が発祥した」とショッキングに書かれていました。先生はそれに加えて「砂漠の中に文明が発祥した」と説明していました。「なぜ砂漠の中に突如として文明が発祥したのか」と子供ながらに不思議に感じたことを覚えています▼戦後六十年代になって、中尾佐助は「文明が発祥したのは、広葉樹林帯の中であった」と言って、世界をあっといわせたのです。それから五十年、いまでは誰も文明が砂漠で発生したなどというものはいません。「文明の前には森があった、文明のあとには砂漠が残る」といわれています。つまり、文明は泥(表土)がつくったのです。
ヨーロッパと日本の差
ヨーロッパは早くから森林を破壊し、泥(表土)を流出してしまい、砂漠が広がりました。日本では縄文時代には表土が数十メートルあったといわれています。これが砂の文化と泥の文化といわれるゆえんです。地図をみると、高いところが茶色で、低いところが緑になっていますが、これは地中海地方の山が当時から既に禿山であったことを物語っています。
泥から離れた文明
人類は泥との格闘の中で文明を発展させたのに、その文明は次第に泥から遠ざかっています。稲も野菜も泥の中からつくられるのに、生活は次第に泥から離れてきました。あなたは一日のうちでどれだけ泥に接するでしょうか。アレルギーや情緒不安定は泥から遠ざかった人間への復讐ではないでしょうか。人類の本当の危機は温暖化よりはむしろ「泥からの逃避」のうちにあるのかも知れません(S)
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