2011年12月3日土曜日

ウェルカム・ウルフ

先日松本市で、オオカミを日本に導入しようというシンポがあった。日本には昔から「ニホンオオカミ」と北海道の「エゾオオカミ」の二種類がいた。その他に「ヤマイヌ」という種類もいたらしい▼1905年、奈良県の東吉野村で、イギリスのアンダーソンが、標本にするため買い上げた動物の死体が「ニホンオオカミ」の最後の目撃情報となった。二日前に材木置き場に迷い込んだ「狼」を猟師があっさり殺してしまい、投げ捨てておいたのだという▼あまりにもあっけない「最後」であった。有名な日本海海戦の四ヶ月前のできごとである。その後数年はどこかに生きていたとしても、今から百年前には絶滅したことは確実であろう。奈良県は一九八七年にその場所にレプリカをつくった▼江戸時代まで日本民族は狼に尊敬の念を抱いていた。「オオカミ」という呼び名からして「大きな神」を意味する。各地の神社には「オオカミ信仰」が今でも生きている。コマイヌの「ア」「ウン」も狼らしい。狼が子育てを始めると巣穴の前にお供えをした地方もあったという▼そんな「神の使い」が明治政府の「文明開化」の呼び声と共に「悪魔の使い」へと変化し、一斉に「狼狩り」が始まった。北海道ではアメリカの牧童を指導者に「ストリキニーネ」という毒薬を用いて大量に毒殺した▼いま鹿の大量発生がいわれており、先日のシンポでは、オオカミの絶滅が原因で生態系が変化し鹿や猪が大量発生したのだとオオカミの復活を強調していた。ドイツの「オオカミ復活作戦」の報告が極めて印象的であった▼しかし、オオカミの導入・復活の実践には、前提として「生態系とは何か」という哲学が必要である(S)

1 件のコメント:

  1. 地方の反乱
    橋下大阪府知事が、任期途中で辞任し、市長に立候補。大差で当選を果たした事件は、世間の耳目を集めた。自分の権力の枠内に「敵」をつくり、強引に突破を図るやりかたは「小泉流」といわれ、マスコミが騒いだ▼言うことを聞かないものは処分するぞというおどしをかけた「議案」が審議中だという。これなどは「ハシズム」という新語を生むきっかけとなり物議をかもしている。橋下徹とは果たして何物か。ファシストか、それとも革命家か?▼一方、目を転じてみると、2000年に長野県で田中康夫が登場、その後「脱ダム宣言」の意を汲む嘉田滋賀県知事から熊本県の川辺川ダムへと「地方の反乱」が続いている。この流れの中に名古屋市の河村たかしがいる。これは脱ダムではないが「市議の手当てが1600万では多すぎる」というもので、これも「地方の反乱」の一種と見ることができる。その流れの中で、橋下徹を見ると、問題は多々ありそうだが、これも「地方の反乱」の一環と見ることができよう▼しかも注目すべきは、既成の政党が全く無力だったことである。自民・公明・民主・共産までが力をあわせたのにきれいさっぱりと「敗北」したではないか。もはや大阪の「民意」は既成政党を完全に見放したのである▼「中央」とはなにか。いままで、公共事業でもダムでも原発でもすべて「中央」が決めてきた。「脱ダム宣言」はその中央に「ノー」を突きつけたのであった▼いま、地方が発言し始めたのである。日本の政治が変わろうとしている。「ハシズム」も期せずしてその一角を担う結果となった。この芽を大きくし、立派な大木に育てることができれば日本も決して捨てたものではないだろう(S)

    返信削除